ポンプや送風機、給水装置、ろ過装置などのインフラ機器を製造する老舗メーカー、テラル株式会社。新卒採用文化が根強いなか、2021年から本格的にキャリア採用をスタート。求人募集を行う部門と人事の連携強化など通して、採用成功を実現しました。部門のキャリア採用に対する意識の醸成をどのように進めていったのか。ビズリーチとの連携で行った取り組みやプロセスの工夫について、福山人事課の今井美穂子氏に話を聞きました。
テラル株式会社 2010年に新卒で医療系専門学校に入職し、約10年間、学生支援や事務業務に従事。2020年にテラル株式会社へ転職。未経験から人事・採用業務に携わる。新卒採用を担当した後、入社2年目からはキャリア採用業務にも携わり、年間100名以上の新卒・キャリア採用を推進。現在はキャリア採用業務を中心に従事している。 |
能動的な採用活動と採用ノウハウの蓄積のために、ビズリーチを導入
──はじめに、テラルの事業概要について教えてください。
広島県福山市に本社を置く、1918年(大正7年)創業の老舗メーカーで、ポンプ・送風機・給水装置・ろ過装置などのインフラ機器を製造しています。2024年で創業106年目を迎えます。
製造、販売からアフターメンテナンスまで一気通貫で行っているところがテラルの強みです。1990年代からはアジア圏を中心に海外展開をスタートし、2000年代からはモーターの自社開発・設計を手掛けています。ディスポーザ事業の展開やクーラントろ過装置の開発など、環境に優しい製品づくりへと事業展開を進め、環境負荷の軽減を意識したものづくりを目指しています。
──これまでの採用課題や、ビズリーチ導入を決めた背景について教えてください。
キャリア採用の需要が高まったのは2021年あたりで、それまでは新卒採用が中心でした。毎年30名ほど新卒を採用し、キャリア採用は年に数名程度。求人媒体やハローワークを使ってほそぼそと人員補充をしていました。しかし、社会環境の変化や労働力人口の減少という懸念があるなか、人員確保を新卒だけに頼っていては持続的な事業成長が難しいことから、キャリア採用を本格化させようと動き出しました。
採用規模は、全国の拠点合わせて年間60~80名。社員の高齢化が進んでおり、次世代の育成が急務となっていました。当社の事業特性上、営業職も技術職も一人前になるには3~5年はかかるため、30代をメインターゲットとして採用し、戦力を強化したいと考えました。
ビズリーチ導入を決めたのは、キャリア採用のノウハウを社内に蓄積させたいと考えたからです。転職市場にはどんな方がいて、求める人材にアプローチするにはどんな情報を発信すべきなのか。自社内で試行錯誤を重ねながら、能動的に動けるチャネルが欲しいと思っていたところ、ビズリーチの存在を知りました。
導入を検討していた当初は、ビズリーチのデータベースにはハイクラス人材が多いというイメージが強く、当社のターゲット層とは合わないかなと思っていました。しかし、実際は当社の求める若手や即戦力人材候補の登録も多いと知り、導入を決めました。試験的に導入した際に早期に即戦力の人材を採用できたことや、採用コストを抑えられる点も魅力に感じ、全社への本格導入を進めていきました。
ビズリーチとの連携で、部門への市況感をインプット。採用への当事者意識を高めていった
──全社への本格導入にあたり、苦労されたことも多かったと思います。キャリア採用文化の社内への浸透は、どのように進めていきましたか。
まさに、ほとんど白紙の状態からのスタートでした。全国に拠点があり部門も多岐にわたっていたので、部門に対する採用活動への協力要請は欠かせません。しかし、「採用は人事がやるもの」という認識が根付いていたので、根気強くコミュニケーションをとっていく必要がありました。
浸透のために行ったステップは大きく二つです。一つ目が、ものづくりの会社ならではの「三現主義」を採用にも取り入れ、現場・現実・現物を部門の担当者と一緒に見ていくことでした。
まず、人事に採用ポジションの相談が来たら、人事と部門の部長、面談の担当者で人材要件のすり合わせを実施。ビズリーチの担当者にも同席してもらい、ターゲットを確定させるなかで、「採用したい人材」と「採用できる人材」は違うという現実を知ってもらいました。また、採用に関する当事者意識を持ってもらうためにはリアルな実体験も大切だと考え、部門の担当者にはまず面談に出てもらうことにしました。候補者の選考辞退があれば「なぜ辞退されてしまったのでしょう」「どうしたらよかったと思いますか」と会話をし、2年間、改善を重ねていきました。
二つ目のステップでは、通過率や内定率など各選考フェーズの平均値を部門に共有しました。売り手市場の環境下で当社が求める人材を採用することがいかに大変なことか、マーケティングの感覚を浸透させていきました。
現在は、人事がターゲットリストを作成したのち、部門の最終面接担当者にリストの確認をしてもらい、部門主導で面談を経て選考を進めています。現在の形になるまで約3年かかりましたが、「候補者を選ぶのではなく、『選ばれる』会社になるためには何をすればいいのか」という視点で会話が進むようになり、意識の醸成につながっています。
また、さらに採用活動を良くするために、面接官向けの研修も実施しました。
──ビズリーチの活用やキャリア採用の考え方を部門へ浸透させていくなかで、ビズリーチから受けたサポートやアドバイスなどはどう役立ちましたか。
各部門との人材要件すり合わせの場では、「そもそも採用とは」「ダイレクトリクルーティングとは」という基本からインプットをしてもらいました。以前は「こんな方を採用したい」と求める人材の必須要件を10個も書いてしまうことがありましたが、転職市場を見れば全てを満たす方の採用は非現実的です。そうしたとき、ビズリーチという第三者だからこそ厳しい実態もはっきり伝えてもらえましたし、部門も、「外部のプロの意見だから」と素直に耳を傾けてくれました。人事と部門とのコミュニケーションが円滑になり、「自分たちが採用に積極的にならなければ、求める人材は採用できない」という危機感を部門側も認識してくれるようになったと感じています。
また、自社の魅力や仕事の面白さを言語化するのに苦労している部門担当者も多く、面談や面接での魅力付けが弱くなっていました。ビズリーチの担当者に仕事内容や大変さ、やりがいを感じるときなど具体的なエピソードベースでヒアリングしてもらい、言語化がスムーズに進んでいきました。
採用に当事者意識を持つ人が増え、部門全体で採用に向き合う意識が芽生えた
──ビズリーチを導入した後の成果について教えてください。
約2年の間に、全国の拠点で10名ほどの採用を実現しました。
以前は、選考途中の離脱が頻発したり、入社後に「思っていた仕事内容と違う」「期待していた人材と違う」といった、入社者と受け入れ部門双方のミスマッチが生じたりしていました。
ビズリーチを導入してからは、面談、面接、オファー面談など候補者の方と話をする機会を多く設けるようになり、相手に伝わる情報量が増えました。テラルに合うのではと思った方に選考に進んでいただけるようになり、選考辞退率も減少しました。
──テラル内の、採用への意識の変化をどのようなところで感じていますか。
採用に当事者意識を持つ人が増えました。以前は、人事から割り振られた面接は対応するものの、その後の採用進捗を気にしていなかったり、誰がいつ入社するのかも認識していなかったりする部門担当者も少なくありませんでした。
今では面接の予定が入ると、一緒に仕事をすることになる職場の同僚や上司に情報を共有したり、オファー面談の場に同席して話すことにも積極的に協力してもらえたりするようになりました。「候補者にいかに選んでもらうか」という意識が芽生えたことから、面接の日程調整にもスピーディーに対応するようになりました。採用に関わっていない部門のメンバーに対して「今の転職市場はこうなっているんだよ」「だから、採用はこうやって進めないといけないんだよ」と話をすることも増え、部門全体で関係者を巻き込みながら採用しようという意識に変わっています。
新しい社員が入ってこなければ、営業の数字は上がらず、開発は進まず、事業成長に影響が出てくることを、部門の一人一人が理解し始めていると感じます。
──これからの採用活動に向けて、展望を教えてください。
キャリア採用はこれからも積極的に行っていきます。今後の転職活動のあり方はますます多様化していくでしょう。当社としても、条件を提示して応募していただくような採用活動だけではなく、潜在層の方に対していかにアピール・アプローチをしていけるかというところにも着目し、優秀な人材の採用を目指していきたいです。
候補者と企業がお互いにカウンセリングのように会話を重ねて選んでもらえるような、そんな採用の形を作っていきたいですね。
──最後に、キャリア採用に課題を持つ人事・採用担当者に向けて、メッセージをいただけますか。
ビズリーチに対して「ハイクラス人材の採用」というイメージを持つ方がまだまだ多いかもしれませんが、使ってみると若手や即戦力人材もいるなどアクティブユーザーがいかに多様化しているかに気付かされます。
受動的な採用チャネルをメインで利用していて「自社が求める方に会えていない」「選考離脱が多く、原因を分析しきれていない」というポジションがあれば、ビズリーチを積極的に使うのも一つの方法だと思います。自社内でデータベース検索から求人・スカウト文の作成、面談・面接を全て対応する必要があるため、工数はかかりますが、その分採用ノウハウが蓄積され、課題の分析ができるようになります。ビズリーチとの連携で、他社事例や市場動向など、客観的な情報を多く得られるのも、大きなメリットです。
ビズリーチを導入してから、面談やオファー面談、会食など、候補者と選考以外の場で会話をする機会が増えました。面接するだけが採用活動ではありません。その前後に発生する候補者との接点を大事にしたいという意識があれば、いい人材との出会いはどんどん増えていくと思います。