システムインテグレータとして、あらゆる金融情報システムの開発を担い、銀行領域、資金証券領域、クレジット領域、保険領域まで幅広く網羅するNTTデータ フィナンシャルテクノロジー。今回は、日本最大級のキャッシュレス決済プラットフォーム「CAFIS(キャフィス)」のプロダクト開発を手掛ける決済イノベーション事業部部長の山崎俊一氏に、部門採用の強化における背景や、実際の取り組みについてお話を伺いました。
決済イノベーション事業部 部長/山崎 俊一 氏 2000年に、クレジット決済など決済系システムに強みを持つ旧NTTデータネッツ株式会社に入社。IT技術者としてアプリケーションからインフラまで幅広くキャリアを積み重ねて現在に至る。2009年に一度目の企業統合を経験し、マネージャー昇格後に事業拡大を目標に「ダイレクトリクルーティング」にチャレンジ。2022年に二度目の企業統合を経て、IT技術者として採用戦略を立案し実現するハイヤリングマネージャーを担う。 |
エンジニア人材の確保に苦戦。キャリア採用強化が必須だった
──はじめに、NTTデータ フィナンシャルテクノロジーの事業概要や決済イノベーション事業部の担う役割について教えてください。
当社は、クレジットカードを中心とした日本最大級のキャッシュレス決済プラットフォーム「CAFIS」の開発・サービス提供を担っており、電子マネー、インバウンド決済、二次元バーコード決済などさまざまな業態業種の加盟店様にご利用いただいています。1984年からサービス開始し、約40年にわたって日本のキャッシュレス市場を支えてきた豊富な運用実績を持ちます。
──事業部門が主体となり、ビズリーチによる採用活動を強化した背景をお聞かせください。
もともと、事業部門が主体となったキャリア採用は2004年から始めていました。プロジェクトマネージャー(PM)、アプリケーションエンジニア、インフラエンジニアの3職種を中心に「いい方がいたら採用しよう」というリファーラル採用が中心でした。
しかし、全社の方針で、新卒採用で入社したエンジニアの人材配置を見直すことになり、インフラエンジニアの外部採用が急務となったのです。そこで、人材採用と育成方針を抜本的に見直さなければならないと考え、社長に「インフラエンジニアを採るための、キャリア採用の新たな手法やフレームを構築したい」と提案し、2018年にビズリーチの活用を開始しました。
──人事部に相談するのではなく、社長に直接状況を伝えに行ったのですね。それができるのは、貴社ならではのカルチャーなのでしょうか。
「採用は事業部門が行う」というカルチャーは、2004年から時間をかけて浸透していました。だからこそ、自分たちで何らかのツールの導入と活用も進めようと発想できたのだと思います。
ビズリーチの導入検討に向けては、インフラ系のベンチャー企業へもヒアリングに行き、いくつかの採用チャネルのメリット・デメリットを教えていただきました。「その会社で何ができるのか」を重視している求職者が多いと聞き、直接私たちからアプローチできるビズリーチがいいだろうと考えました。
エンジニア採用のノウハウを詰め込んだ「勉強会」が、採用力向上に影響
──部門採用の具体的な進め方について、チーム体制やターゲット設定、採用活動のプロセスなどとあわせて教えてください。
導入当初は、課長だった私と、もう一人のメンバーの2人体制でした。当時、ビズリーチ主催の勉強会に参加し、採用の基本となる多くの学びを得ました。そこから、当事業部の採用の基本方針として、「人材の採用と育成をセットで考える」ことを大事に、事業成長のためにどんな方に入っていただきたいのかを言語化していきました。
はじめは、ITの専門性と経験年数でターゲットとなる人材を可視化し、勉強会で学んだ通り、とにかく候補者との接点を増やし、お会いすることでPDCAを回していきました。
スカウト送信数や面談設定数などの「量」にこだわり採用活動を続けた結果、ダイレクトリクルーティングのコツをつかむことができ、人材要件のイメージもより具体的に持つことができました。そこで現在は、候補者に読んでいただけるスカウト文をこだわり抜いて作成し、よりターゲットとする人材だけにお送りする、「数より質」を重視しています。
──山崎さんは部長として主業務もあるなかで、どのぐらいの配分で採用に関わっているのでしょう。
日々コツコツ続けることが大事だと考え、毎朝30分、時間を確保し、データベース検索やスカウト送信を行っていました。部長に就任した後は、より採用に注力したいと考え、現在は業務全体の3割を採用活動に割いています。採用チームが5人体制になり、検索や送信業務を任せられるようになったので、今の中心業務は候補者リストのチェックや、チームメンバーとの意見交換、人事部との調整などになっています。
──部門採用を進めるうえで、工夫したこと、採用チームづくりのポイントは何ですか。
エンジニア採用のノウハウを社内メンバーに伝える「勉強会」を開催しています。採用チームメンバーのなかには、エンジニアや採用の経験がない人もいるので、エンジニアである私の知識や、これまでの採用活動を通じて得た知見を共有することが欠かせません。勉強会は全10回開催し、インフラエンジニアとして、当社の決済サービスを手掛けるうえで必要な知識やスキル、求めるのはどの業務工程を担うポジションなのかなどの詳細情報を資料にまとめ、どんなキーワードで候補者データを見るといいのかなどもすべて伝えています。だんだんと、私よりもメンバーのほうが最適な候補者を見つけてくれるようになり、非エンジニアのメンバーもここまで理解が深まるのだとうれしく思っています。
部門採用を継続するために、チームみんなで「楽しくやること」を大切にしてきました。例えば、定例ミーティングを「茶話会(さわかい)」と呼ぶなど、和気あいあいとアイデアを出しやすい環境づくりを目指しています。候補者の進捗を共有したり、スカウトの文案を出し合ったりするほか、業務内外の悩み相談もし合える関係づくりを大事にしています。
自分たちで仲間を増やす意識が芽生えた
──部門採用を通じた成果についてお聞かせください。
ビズリーチの活用を始めた当初は、企業各社がエンジニア採用を強化する状況もあり、採用人数が年間で1名や0名の年もありました。それでも弱音を吐くことなく継続し、2023年度はITエンジニア8名の採用がビズリーチ経由で決まっています。リファーラル採用の5名より多くなり、試行錯誤しながら一期一会という「質」にこだわった方法が、成果につながったのかなと思っています。
──部門採用を強化してきたなかで感じる事業への影響・部内の変化について教えてください。
社内に「採用といえば山崎」という認知が広がり、他部署のメンバーから採用についての相談がよく来るようになりました。
当社はそもそも新卒採用文化が根強く、新人を育成することを得意としてきたので、「ITのプロフェッショナル人材をキャリア採用する」という発想自体がありませんでした。私たち採用チームがビズリーチを活用し、スカウト文に頭を悩ませたり、面談に出掛けていったりする姿を見て、「こういう方法で仲間を増やせるんだ!」と新しい選択肢が生まれたのではないでしょうか。新たなプロジェクト案件を進める際も、「こういう人を採用したいね」という話が現場から出てくるようになり、自分たちで仲間を見つけに行くという意識が芽生えてきたと思っています。
──今後の採用活動における展望、取り組みたいことを教えてください。
採用活動における課題は、ターゲット層に向けた採用ブランディングです。自社の魅力をまだまだ発信しきれていないので、決済インフラに携わる面白さや築けるキャリアについて、情報提供に力を入れていきたいです。また、入社してくれたメンバーに長く楽しく、心地よく働いてほしい。部門の採用責任者として、オンボーディングまで見られるようにしていきたいです。
──最後に、これから部門採用を強化したいと考える企業や人事担当者に向けたメッセージをいただけますでしょうか。
部門採用の大きなメリットは、多様なキャリアを歩んできた方と直接お会いできること。そして、データベース検索を通じて、候補者のスキルや経験、専門性に関する市場観が部門内に蓄積されていくことです。事業部門が本当に求める人材にアプローチするには、外に任せずに部門主導でやることが、中長期的に見れば近道です。
自分たちは選ぶ側ではなく選ばれる側。その考えが浸透するだけでも、価値があると思います。「どんな方に出会えるのかな」と気軽な気持ちで踏み出してはいかがでしょうか。