「働くをもっと楽しく、創造的に」をミッションに掲げ、ビジネスチャットツール「Chatwork」事業を展開するChatwork株式会社。事業・ユーザー数の拡大とともに採用強化を進めてきた同社では、2021年秋よりビズリーチの活用を本格化させ、2023年現在ではビズリーチなどのスカウト型サービスによる入社者が急増しています。どのようにしてビズリーチの活用を推進してきたのか、ピープル&ブランド本部HRBP&TA部の渡辺道太氏に、その内容と成果についてお話を伺いました。
ピープル&ブランド本部 HRBP&TA部/渡辺 道太 氏 大学卒業後、2018年に株式会社ウィルグループに入社し、人材派遣・紹介のセールスを経験。2020年より人事に異動、採用リーダーとして年間100名規模の新卒採用を推進した後、同年9月にHR系スタートアップに入社。執行役員として、人事組織の立ち上げ・グロースを経験。その後2021年9月にChatwork株式会社へ入社。キャリア採用領域において、ダイレクトリクルーティングの戦略立案・運用や、採用イベントの企画・運営、リファラル採用の推進を担当している。 |
ビズリーチの活用を通して、全ポジションの採用の勝ちパターンを作る
──はじめに、Chatworkの事業概要や強みについて教えてください。
クラウド型ビジネスチャットツール「Chatwork」の提供をメイン事業として、導入社数は41万社(2023年6月末時点)、利用者数は国内No.1(※)となっています。「Chatwork」の特徴は、中小企業のお客様をターゲットにした、ビジネス仕様のシンプルな設計にあり、昨今のリモートワークの広がりも追い風となってユーザー数を増やし続けています。
2025年以降の長期ビジョンとして「ビジネス版スーパーアプリ」を掲げており、ビジネスで活用する多様なサービス機能を集約した、あらゆるビジネスの起点になるプラットフォームを構築することを目指しています。「Chatwork」をインターフェイスとして、営業、会計、労務管理などのSaaSサービスから、ビジネスアプリケーションまで幅広く連携させることで、私たちが長く向き合ってきた中小企業のDX推進に貢献したいと考えています。
※Nielsen NetView およびNielsen Mobile NetView Customized Report 2022年5月度調べ月次利用者(MAU:Monthly Active User)調査。調査対象はChatwork、Microsoft Teams、Slack、LINE WORKS、Skypeを含む47サービスをChatwork株式会社にて選定。
──Chatworkでは、2021年秋以降、ビズリーチによる採用活動を活発化されています。大きく動き出す背景となった採用課題や事業戦略について教えてください。
Chatworkでは、以前からビズリーチを導入しており、現場主導で活用していました。年間で数十名程度の採用数だったので、現場がサーチから選考まで担っていても、そこまで業務負荷がかからずに運用できていたのです。
そこに新型コロナウイルス感染症が拡大したことで、当社の状況は大きく変化しました。リモートワークの広がりで、導入企業やユーザー数が一気に増え、採用数も年100名規模へと大幅に拡大しました。そこで、間口を広げて母集団を増やそうと人材紹介の利用を加速させ、人事体制も強化し、ビズリーチの活用にも一定のリソースを割こうと動き出したのです。
私は2021年9月に入社し、2カ月後の11月にはダイレクトリクルーティング担当として、現場を主導していく役割を担うことになりました。
──人材紹介の利用拡大だけにとどまらず、ビズリーチの活用に注力したのはなぜでしたか。
大きく二つの理由があり、一つはコストメリットです。年間100名の採用がすべて人材紹介会社経由となれば採用コストは膨大で、継続が難しいという課題もありました。
もう一つの理由は、自社で採用の勝ちパターンを構築したいと考えていたことが挙げられます。Chatworkはポジション数が多く、多いときで30近い募集があります。ポジション一つ一つの要件に合わせたスカウト文の構成や求人の打ち出し方などの勝ちパターンを把握するために、自社でしっかりデータを持ち、数値的根拠に基づいた採用をしていくには、ビズリーチが適していると考えました。
データドリブンな採用の基盤づくりを強化。データを活用し現場と改善を実施
──ビズリーチ活用を進めるにあたり、それまでの採用活動を具体的にどのように変えていきましたか。
もともと採用を大事にするカルチャーは全社に根付いていて、現場マネージャーとの連携の土台もありました。「Chatwork」内に専用のグループチャットがあり、候補者情報や評価ポイントの共有もできていたので、そのベースを生かしながら活動強化に向けて取り組みました。
大きな課題は、「活動量」の担保でした。それまでは、現場がサーチしたターゲットリストを元に、人事はスカウトを送るだけでした。それではスカウト送付量が圧倒的に足りなかったので、まずは人事が、現場のニーズに合ったターゲットをサーチ、ピックアップできるように人材のペルソナ理解から始めました。
具体的には、ポジションごとに求めるスキルや志向性に加えて、どんな業界・会社に属し、どんな職種で活躍しているかまでを現場にアウトプットしてもらいます。非常に細かい内容ではありますが、ターゲットが勤務しているであろう企業名まで明確に記載してもらい、この内容をもとに人事がサーチした候補者をターゲットリストに入れます。現場には、書類選考する気持ちで候補者の評価を入力してもらい、現場の目線感とのすり合わせを行っていきました。
──直近1年間のスカウト返信率平均が13.49%と、ビズリーチ全体平均の8%を大きく上回っています。どのような工夫をされていたのでしょうか。
人的リソースを割けるようになり、毎日ビズリーチのデータベースを見る時間ができたこと。そして、選考フェーズごとのデータ分析により、スカウト文のABテストや、返信率からの仮説検証ができるようになったことが大きな要因だと思います。
ダイレクトリクルーティング担当になった直後は、他のスカウトサービスも含め月に約400通のスカウトを送っていました。量を担保しなければならないという思いから、がむしゃらにスカウトを送っていたのですが、データをきちんと取り始めてからは、ポジションごとの開封率や返信率が可視化されたので、改善すべきポイントが見えてきました。
月間、週間で開封率や返信率が見えると、「開封率を上げられるようにタイトルを一緒に考えませんか」「今のスカウト文では返信率が低いので添削してもらえますか」など、現場へのお願いもしやすくなります。ポジションごとの返信率比較も、数字で一目瞭然なので、現場も「(他の部門と比べて)確かに私たちの部門だけ低い」と納得感があるんです。
それまでは肌感覚で、最近返信が来ないと思いながら、スカウトの定型文をなんとなくカスタマイズしていました。今では、候補者の「Will」や「キャリア観」を意識した表現を入れて返信率の変化を検証し、各ポジションの勝ちパターンを分析できるようになりました。
──活用を進めるにあたり、ビズリーチのコンサルタントとどのような連携を行いましたか。
データドリブンな採用を始めるにあたり、コンサルタントには定期的にアドバイスをいただきました。
データ収集では、全ポジションでスカウト送信数、開封率、返信率、書類通過率、面接通過率まで細かく数値化していますが、「どんなデータを集めて、どう分析すべきか」を一緒に考えてくださいました。
また、転職市場の相場感、競合他社の採用状況など、市況感をよく知っているからこそ、「この求人は難度が高いので、返信率の相場もこれくらいです」「このポジションは、もう少し改善の余地がありそうです」などの指摘がありがたかったです。採用難度から鑑みた「注力すれば採用確率が上がりそうなポジション」が分かったので、むやみに頑張りすぎなくても良い状態を作れました。だからこそ、一喜一憂しすぎることなく続けてこられたのだと思っています。
面談での魅力づけや日程調整など、現場の主体性が高まった
──実際の採用成果について教えてください。
2021年には、人材紹介会社経由での入社者の割合が全体の9割を占めていましたが、2023年現在はスカウト型サービスやリファラル、自主応募など人材紹介会社以外の経由による入社者の割合が5割にまで伸びています。
スカウト型サービス経由の入社者の内訳を見ると、マネージャー層やハイスキル層で成果が出ています。2021年まではメンバー層を多く採用しなければいけない状況でしたが、現在は組織を束ねるハイクラス人材の採用が重要テーマです。選考フェーズごとに細かくデータ分析ができていたからこそ、ピンポイントで候補者にChatworkで働くやりがいや面白さを伝えるための工夫(アトラクト)を、戦略的に行えるようになったと感じています。
──ビズリーチの活用を通じて、社内に変化はありましたか。
現場の採用への温度感はもともと高いと思っています。ただ、ビズリーチの活用を進めたことで、現場からは「候補者の人数がぐんと増えた」と感じていただけたように思います。その影響からか「自分たちももっと採用活動をがんばります」とより主体的に動いてくれるようになりました。
カジュアルな面談でのアトラクトや、選考につないでいくところでも、現場の担当者がその場で面接日程の調整を進めてくれるようになりました。スピード感が上がり、候補者の転職意向も上がっていく、良い相乗効果になっています。
私から現場には「絶対に良い人を連れてくるので、良いと判断したら全力で魅力を伝えてほしい」と話し、意向度を高める面接に注力してもらっています。その結果、スカウト型サービス経由での内定承諾率は80%を超えているのも、現場の採用に対する温度感が高まっている成果だと思います。
──これからの採用活動に向けた課題や展望についてお聞かせください。
ダイレクトリクルーティングの「活動量」はまだまだ足りていません。採用ポジションが非常に多く、一人で見るのは無理があるので、どう現場を巻き込んで、質を上げていくのかを考えていかなければいけないフェーズだと考えています。
長期ビジョンの実現に向けては、より一層様々な経験を積んだ方に来ていただく必要がありますし、最近ではM&Aを実施するなど、グループ経営の強化も必至です。その際、これまで蓄積してきた採用のノウハウやナレッジを、他の人事メンバーや現場にどれだけ伝えられて再現性を持たせられるかが、これからのチャレンジになるでしょう。
しかし、こうした組織が拡大していくなかで人事として経験を積めるチャンスはそうそうありません。とても恵まれた環境だと思っているので、事業にもっと貢献していきたいと考えています。
──最後に、人事・採用に関わる読者の方へのメッセージをお願いします。
ビズリーチによる採用活動は、適切に運用できれば非常に有効な採用手段だと考えています。自分たちが「本当に会いたいと思える人」に出会え、直接アプローチできることが最大の魅力です。現場の方々と一緒に試行錯誤を重ねながら、ぜひ、それぞれの企業の勝ちパターンを見つけていってほしいです。