「モノづくりの進化と革新を支える」というミッションを掲げ、メーカー向けに、製品の検査・検品の自動化のためのSaaS「AdaInspector Cloud」を提供する株式会社アダコテック。社員12名という創業期にもかかわらず、わずか半年でビズリーチを活用してAIエンジニアを含む3名を採用することに成功しました。早期に採用を実現した秘訣やビズリーチの活用時に工夫したことなどについて、コーポレートの出塚杏沙氏、営業責任者の高萩圭太氏にお話を伺いました。
コーポレート/出塚 杏沙 氏(左)
営業責任者/高萩 圭太 氏(右) |
製造工場の見学や創業期のカオスなど、自社のリアルを魅力訴求につなげた
──はじめに、アダコテックの事業概要についてお教えください。
出塚:アダコテックは、「モノづくりの進化と革新を支える」というミッションを掲げ、メーカー向けに、製品の検査・検品の自動化のためのSaaS「Adalnspector Cloud」を提供しています。使われているのは、産総研(国立研究開発法人産業技術総合研究所)が開発した画像解析技術。効率よく異常を検知し、高い欠陥検出率を誇ります。また、SaaSのため低コストで導入でき、現在、大手自動車会社をはじめ累計145社にご活用いただいています。
高萩:製造業の検品市場は30兆円(当社試算)といわれていますが、その検品作業の95%は人の目で実施されています。少子高齢化で人材が減っていくなかで、AI技術の導入は課題とされてきました。少ないデータサンプルで高い精度を求められる検品の画像解析は非常に難しい領域でしたが、アダコテックではそれを実現し、多くの生産ラインから高い評価をいただいています。
──ビズリーチを活用した採用活動を行っているとのことですが、具体的にどのようなことを行ってきたのでしょうか。
出塚:ビズリーチは、私が1人目のコーポレートメンバーとして入社後すぐに導入しました。私も高萩も、前職でビズリーチを活用した採用に従事しており、データベースの信頼性が高かったからです。
ビズリーチ導入以前のアダコテックでは、人材紹介会社からの紹介により必要なポジションを1名ずつ採用していました。しかし、セールスやエンジニアの複数名採用のニーズが出てきたためビズリーチを導入。同時に現場主体の部門採用も進めていきました。
もともと代表の河邑の採用意識が高く、「全社で採用していこう」という発信も多くありました。ただ、現場の行動はなかなか伴っていなかったので、まずはカジュアルな面談に入ってもらうところからスタートしました。私がスカウトした候補者に面談で最初から会ってもらい、事業や仕事の魅力を伝え、自分の言葉で口説いていく。実際のプロセスを経験することで、採用への意識が少しずつ変わっていきました。
──人事と部門はどう役割分担をしていますか。
出塚:コーポレートは候補者との日程調整やスカウトによる母集団形成を担当しています。その後の絞り込み、口説き、見極め、採用への精度を上げていくのは部門の役割です。
部門との認識合わせにおいては「ターゲットリスト」を活用し、リストに追加した候補者が採用ニーズにきちんと合っているのかをコメント欄を活用してチェックしていました。そのためターゲットについて、主務で忙しい部門とのミーティングなどを設けずとも、大きな齟齬なく連携を進められました。
──創業期のスタートアップということもあり、スカウトや面談・面接での自社の魅力訴求ではどのようなことを意識しましたか。
出塚:スタートアップならではのカオスな状況をポジティブに見せるための表現をスカウトに取り入れました。「3人目の事業開発メンバーを募集」などと組織として初期段階であることや、特許技術の詳細を紹介することで、候補者への興味喚起を図ろうと考えました。
セールスなどビジネスメンバーの採用においては、若いフェーズの会社ゆえに「できることがたくさんある」と訴求。コアな技術とリリースされて間もないプロダクトがあるなかで、誰にどのようなサービスを提供すべきかを考えながらビジネス開発ができる点を、面談・面接でも伝えていきました。
高萩:アダコテックには製造業の出身者が多く、お客様の製造現場に足を運び、一次情報を取りに行くことを大事にしています。候補者にはそのカルチャーも伝え、選考プロセス内で、製造業の工場に見学に行ったこともありました。現場の検品業務にはどんな課題があり、アダコテックの高い技術力がどう活用されているのかなど見てもらうことで、事業の重要性や将来性をポジティブに捉えてくださる方も多くいました。
メンバー全員で求める人材像を言語化し、採用時のカルチャーマッチを実現
──実際の採用の成果についてお聞かせください。
出塚:ビズリーチ導入から約半年の運用で、ビジネスメンバー2名、AIエンジニア1名の採用を実現しました。
ビジネス側で入社したメンバーの一人は、大手メーカーや環境を配慮した素材開発を行うスタートアップでセールスや事業企画に従事。製造業界での経験・知見に加えて、突破力もあるなど、まさに当社のカルチャーにマッチしたメンバーです。
AIエンジニアとして入社したメンバーは、大手メーカーなどでR&D(研究開発)部門の主任として活躍していたメンバーです。前職でマネジメントポジションになり、現場を離れて手を動かす機会が減ってしまったことを残念に思っていたこともあり、当社での新たな挑戦に興味を持ち入社にいたりました。自身で機械学習について学習し、複数の機械学習プロジェクトのリーダーに登用されるなど、AIや画像処理に深い知見があり、製造業への知見も持っているエンジニアです。転職市場のなかでもAIエンジニアは希少な状況で、技術・業界知見の両方を持つ、まさに当社が採用したいと思う人が入ってくれました。
創業期かつ社員数約10名フェーズというスタートアップにおいて、メンバー一人が事業に与える影響は絶大です。そのようななかで、スキル・カルチャーの双方がマッチした人を3名採用できたことは、当社にとって非常に大きな出来事となったように思います。
──その採用実績を出せている秘訣・要因には、どのようなものがあると思いますか。
出塚:「アダコテックが求める人とは」「アダコテックにどんな人に来てほしいか」をメンバー全員で考える機会を作りました。私自身がアダコテックに入社した際、カルチャーの統一感、働くメンバー全員が同じ方向を向いており、それが自然なことのように阿吽の呼吸で成り立っていたことにとても驚きました。採用においてカルチャーマッチはとても大切なので、「早期にこのカルチャーを言語化したい」「今後組織が大きくなっても再現性を持たせたい」と考え、求める人材像の言語化を進めました。この言語化がビズリーチを活用した採用活動にも生きているように思います。
高萩:その成果もあり、内定承諾率はほぼ100%です。そもそも、社員全員が「この人と本気で一緒に働きたい」と思ってから内定を出しています。そのため、メンバーが内定を出す理由を検討し、その内容も踏まえて代表の河邑がオファー面談を行います。「なぜこのポジションが会社に必要なのか」「なぜこのポジションであなたに内定を出すのか」を丁寧に伝えており、こうしたプロセスが内定承諾率の高さにつながっていると思います。
「採用活動における基本の順守」「自社の強みに目を向けること」が何よりも大事
──前職でも採用に従事したお二人が思う、アダコテックでの採用活動を通した新たな気づきについてお聞かせください。
出塚:当然ながら、スタートアップは大手より知名度もなく、転職市場へのインパクトも小さいです。しかし、「スタートアップだからできること、アダコテックだからできることはなんだろう」と強みを生かした採用を考えていました。内定承諾の決め手で多いのは人軸だったので、それを生かせる採用プロセスを組むなどの工夫をしてきました。魅力訴求の段階から「どんなメッセージを送れば返信してくれるか」「スタートアップならではのポイントはどこか」を意識しており、企業規模にかかわらず、自社の「強み」に目を向けることが大事だと思います。
高萩:代表の河邑自身が採用を経営課題と認識しており、「コストではなく投資」と捉えていました。そうした土壌があるなかで動くことができたのは大きかったです。現場がデータベースを見て「どんな人と働きたいか」に真剣に向き合うなかで採用活動が活発化し、「こういう人がいるけれど、アダコテックに合うのでは」などリファーラル採用の提案もより活発になっています。
──最後に、創業期のスタートアップでの採用に悩む方やダイレクトリクルーティングに挑戦したいと考えている方に向けてのメッセージをお願いします。
出塚:当たり前のことを当たり前のようにすることが何よりも大事だと思います。「候補者からのメッセージに早く返信する」「フィードバックを本人にちゃんと伝える」「採用担当や人事が、候補者の不安や疑問を解決するフォロワーになる」など、採用活動における当たり前をしっかり行うことは、企業規模を問わず重要です。細かな行動を重ねて初めて他社と差別化ができると思っています。それらを努力したうえで、企業の知名度で争うのではなく、スタートアップだからこその魅力を見いだし、そこから「自社の採用とは何か」を作っていけるとよいのではないかと思います。
高萩:採用はまさに経営そのものだと思います。創業期のスタートアップにおいて一人の採用で事業の成長角度が大きく変わることを、私自身がアダコテックに入社してひしひしと感じています。少々強い表現になりますが、採用という重要な仕事こそ全力を傾けて取り組むべきだと思います。一方で、スタートアップで採用を進めるうえで「知名度がない」などの「採用ができない理由」が多いことも事実でしょう。だからこそ、出塚がお伝えしたような丁寧で真摯な候補者への対応やフォロー、入社をして欲しい方に向けて熱意を込めて思いを伝えるといった当たり前のことを、「地味に地道に取り組む」ことが大事だと思います。