「HUMANOLOGY for the future - 人とテクノロジーで、その先をつくる。-」を企業ビジョンに、システムインテグレーション、コンサルティング、シンクタンクの連携でお客様への価値提供を行う電通総研。さらなる事業成長に向けて採用に力を入れている事業現場の部長が進める取り組みについて、お二方にお話を伺いました。
株式会社電通総研 HCM事業部 HCMコンサルティング3部 部長 夷塚 将彦 氏(左) 株式会社電通総研 金融ソリューション事業部 基幹業務第1ユニット クライアントソリューション2部 部長 鋤柄 和俊 氏(右) |
2030年に向けた事業成長を目指す中、採用競争は激化。待ちの姿勢の採用に強い危機感
──各事業部の概要や募集ポジションについてお聞かせください。
鋤柄:金融ソリューション事業部が主に担っているのは、金融機関様向けのシステム導入やコンサルティング業務です。昨今は、小売業界など非金融企業でも金融サービスを導入するケースが増えており、私たちのコンサルティングサービスの対象業界、企業は多岐にわたっています。そうした変化の中で、金融業界の基幹システム、会計周りのシステム構築・導入に知見を持った方の採用に取り組んでいます。
夷塚:HCM(Human Capital Management)事業部は主に人事系のソリューションを提供している事業部です。数あるソリューションの中でも「POSITIVE(ポジティブ)」という商品を主力にお客様に価値提供しており、その提案や導入を担えるプロジェクトマネージャーやリーダーを募集しています。
※「POSITIVE(ポジティブ)」は、高度なグループ管理を実現する統合HCMソリューション。基幹人事システム(人事・給与・就業管理、ワークフロー)だけでなく、タレントマネジメントやモバイルなど広範な機能を網羅している。
──両事業部で採用に注力しはじめた背景について教えてください。
鋤柄:他業界から金融業界に参入する企業が増えている中で、金融業務に知見のあるエンジニアの希少価値はますます高まっています。同時に、当社の採用を取り巻く外部環境として、採用競合となるコンサルティングファームが増えているほか、求職者においても以前はSIer業界内での転職がメインでしたが、事業会社の社内SEに転職するケースも増加しています。
採用競合が多方面に広がる中で、待ちの姿勢では優秀な方を採用できないという危機感が、事業部自らが採用に力を入れはじめた理由です。
夷塚:HCM事業部では人材が不足していることで、お客様から案件の相談をいただいてもお受けできないこともあり、機会損失につながっています。2030年に向けて、さらなる事業成長を目指す中で、採用の強化が欠かせないと考え、スカウト型の採用やリファーラル採用に積極的に取り組んでいます。
事業部内に採用ワーキンググループを発足。事業部が能動的に採用できる環境を整備
──事業部における採用の取り組み内容や、大事にされていることを教えてください。
夷塚:HCM事業部では、数年前までは人材紹介会社を中心に年間2~3名程度の採用をしていました。しかし、採用数の伸びしろに限界を感じ、スカウト型の採用の強化とリファーラル採用の促進に着手しました。
スカウト型の採用は以前から細々と実施していたものの、実際の採用にはあまり結びつかず、あらためて2023年から本腰を入れて取り組みはじめました。ビズリーチ上には膨大な数の求職者がいます。その中で自分たちが本当に求める人は誰かを絞り込み、探していく過程は、試行錯誤の連続でした。
初年度は私1人でスカウトの文面作成と送信を担当し、毎週求職者を検索しました。ビズリーチの担当者からは「200通送って1人採用できればいい」と聞いていたので、あまり一喜一憂しないように根気強く進め、少しずつ返信数や採用決定数が増えていきました。ノウハウが蓄積されはじめた2年目からは、組織的に運用していこうとマニュアルを作成し、私自身の経験を盛り込んでグループマネージャーに展開していきました。
鋤柄:事業部で主体的に採用を進めるために採用ワーキンググループを立ち上げました。採用ワーキンググループでは、各部署の求人を取りまとめるとともに、ポジションごとに求める人材の要件整理も行い、より採用につながりやすい求人作成の支援をしています。
また、ビズリーチをはじめとするスカウト型の採用は、各部署の部長が自ら活用できるように働きかけたり、スカウトの環境を整えたりしています。部長にとっては通常業務のアドオンになり短期的には負担が増えますが、「お客様への価値提供のために、人は一番大事なリソース」「部長が採用にコミットしていこう」と伝えながら、1日5分でもスカウトの時間を作ってもらうように伝えています。
さらに、入社した方が安心して働ける環境づくりも採用ワーキンググループの重要な役割です。入社者との面談を行い、悩みごとがあればすぐに相談してもらえるような関係づくり、場づくりを進めています。
──ビズリーチの活用にあたり工夫されていることを教えてください。
鋤柄:スカウト文は自分たちだけで作成しても求職者に響かない内容になってしまうだろうと思い、求職者の視点でどんなキーワードを入れていくとよいか、ビズリーチの担当者に相談しながら改善していきました。
夷塚:導入当初はビズリーチの担当者に丁寧に操作説明をしていただいたほか、検索条件の設定をどう改善すべきかアドバイスをいただきました。求職者の方がビズリーチにどういった情報をどういった形で登録する傾向があるのか、私たち企業側はわかりません。
例えば希望勤務地や希望職種をどのように登録しているかなどの傾向や特徴をビズリーチの担当者に教えてもらいながら、検索条件を設定してスカウトを送信し、返信率を見ながらまた内容を変えていくといった形でブラッシュアップしていきました。
──カジュアル面談や面接における候補者とのコミュニケーションで意識されていることはありますか。
鋤柄:採用や面談・面接のノウハウを「虎の巻」としてまとめて、事業部の掲示板に載せることで、これから面接官になる者の育成を進めています。内容は、面談・面接する上で気を付けてほしいことや動機づけの際に意識してほしいことなどです。
「人」を大事にしない企業に、新しい人材は入ってきません。面接官には「最終的に、採用に至らなくても、良い企業という印象を持ってもらうこと、好きになってもらうことが大事」と伝えています。候補者とのつながりは今後も続いていくという意識醸成を徹底し、事業部内にかなり浸透しているのではないかと思っています。
夷塚:HCM事業部では、カジュアル面談を担当する面談官・採用選考を担当する面接官の人選見直しを行いました。以前は面談官の年齢が高めだったのですが、候補者層が40代以下ということもあり、若手マネージャー陣を中心にアサインしました。候補者から見て、より近い立場の社員とカジュアルに話せるような面談の場づくりを進めていきました。
スカウト型の採用においては転職意向がそこまで高くない方とも面談でお会いします。そうした前提をチームで共有し、「カジュアル面談は、候補者に面接に一歩踏み出してもらうための意識醸成の場」というマインドを浸透させていきました。
「こんな仕事がしたい。そのためにはこんな人に来てほしい」と対話する社内文化が形成された
──ビズリーチの活用によって、具体的にどのような成果につながりましたか。
鋤柄:採用実績数としては、事業部単独で例年15~20名の採用枠に対して、2023年度は23名採用となり、うち2~3割がビズリーチ経由でした。また、もともと転職意向が高くなかった候補者が、カジュアル面談を経て意向が上がり入社に至ったケースがありました。
ニッチな事業領域、ポジションであるほどスカウト型の採用は効果を発揮すると実感しています。事業部の主体的な採用は一定程度浸透してきているので、これからは、入社者の定着や活躍にも注力していきたいです。
夷塚:スカウト型の採用がニッチな事業領域で特に効果的というのはその通りだと思います。HCM事業部では人事系システムの経験者という専門人材をビズリーチ経由で2023年度は4名、2024年度は3名採用できました。2022年度まで実績がほぼなかったところから、大きく成果を上げています。
キャリア採用市場における当社の認知度はそこまで高くないので、求職者に直接メッセージを届けられるスカウト型の採用はとても大事なツールだと思っています。現在は、さらに返信率が上がるような施策を取り入れられないか、新たに試行錯誤を始めています。
──事業部による採用を成功させるために、現場の部長が持っておくべきマインドやアクションのポイントがあれば教えてください。
鋤柄:部署内で、「自分たちの仲間を増やしたい」というマインドを醸成することが何よりも大切だと思います。以前は、現場が採用したいと思う候補者からの応募がなかなかないこともありましたが、今では「だったら自分たちで探しにいこう。現場で求める人材は自分たちで採用しにいこう」という考えが広がっています。
金融ソリューション事業部では、部長やマネージャー陣が「こんな仕事がしたい。そのためにはこんな人に来てほしい」といった話を雑談の中でしています。将来的な事業成長を見据えながら求める人材について対話する文化も大事にしていきたいです。
採用ワーキンググループが行っている具体的なアクションの一つとしては、スカウトの動きが悪いところの理由を探り、ビズリーチの担当者と一緒にプッシュしていくことです。事業部から「このポジションに合いそうな人材がいない」という声が出てきたら、一緒に検索条件のすり合わせやスカウト文の改善などを行い、こまめなフォローを欠かさないようにしています。各部門にしっかり任せる一方で、モニタリングとプッシュが大事なポイントだと思います。
夷塚:待ちの姿勢だけでは採用数は伸びない、という前提に立ち、他の採用チャネルも踏まえてチャレンジしていくことが大事だと思います。例えば、HCM事業部ではリファーラル採用の促進のため、直近数年以内にキャリア入社した社員を集めて説明会を行いました。事業の拡大にとって人材採用が重要であることや、当社で活躍いただける人材のイメージを事業部社員に共有し、一緒に働く仲間集めを事業部全体で進めました。
部長が採用への意識を高く持つのはもちろんですが、マネージャーやメンバーに対しても採用活動への意識醸成を行うことが採用成功につながるのではないかと思います。
また、候補者と対話する面接官のマインド醸成も欠かせません。「いいなと思う候補者は、ほかに内定をいくつも持っている」と考えた上で、こちらからどう自社の魅力をアピールしていくか、という視点でのコミュニケーションをこれからも大切にしていきたいです。